内容証明郵便で支払を請求しても相手が応じてくれなかったり、反応がない場合には、裁判所の力を借りて相手に支払をするように請求する方法がいくつかあります。
その中でも、手軽に行えるのが「支払督促」と呼ばれる制度です。
それは、通常の訴訟手続によらずに、簡単な方法でしかも安い費用で判決を得るのと同じ結果を生むことが可能な制度でもあります。
ただし、債務者側から、異議が出たときは、通常の訴訟に移行することにもなります。
この制度は、民事訴訟法382条で定められたもので、債権回収の有効な手段となりえます。
申立ては金銭債権の額にかかわらず、簡易裁判所で行います。
支払督促の効果
裁判所書記官から支払督促状が送られてくれば、通常、債務者は動揺するものです。
内容証明郵便を送っても動じなかった債務者に対して多大な心理的プレッシャーを与えることができ、支払いに応じさせる可能性を高めることができます。
また、債務者がこの督促状を放置して2週間が経過すれば、債権者は債務者の財産に強制執行することも可能になります。
支払督促制度のポイント
支払督促のメリット
(1)簡単
・・・通常の訴訟(裁判)とは異なり、申立人(債権者)の申立書を受理した裁判所
は、書面審査のみを行い、申立書に問題がなければ債務者(相手方)に支払
督促を送ってくれますので、申立人が裁判所に出頭しなくて済みます。
また,少額訴訟ような請求金額の制限はありません。
(2)迅速
・・・訴訟のように債務者を呼び出して事情を聞いたり、証拠調べなどは一切行われ
ませんので、非常に迅速です。また、債務者からの異議がなければ早くて1ヶ月
余で 強制執行手続ができるようになります。
(3)安価
・・・費用は通常の裁判の半額以下で済みます。
支払督促のデメリット
支払督促の申立ては、相手方の住所地を管轄する簡易裁判所に申し立てなければなりません。
たとえば、お金を貸した相手が遠方だと、その相手方の住所地を管轄する簡易裁判所が支払督促の管轄裁判所となります。
支払督促申立書は郵送すればいいのですが、異議申し立てをされてしまうと、その遠方の裁判所が管轄裁判所となってしまい、わざわざ交通費をかけて出かけていくことになりますので、原告(貸主)不利になります。支払督促申立ての際の注意点です。
その他
・金銭の支払請求などにしか利用できません。
・公示送達ができないので、債務者の住所が不明の場合にはこの制度は使えません。
支払督促に向くケース
支払督促というのはどういうときに行なうのが有効なのかといいますと、
(1)債務者が無視している場合。
つまり明確な借用書があるにもかかわらず「オレは知らん」と言ってきたときのことです。
支払督促をかけてしまえばこういう言い訳は通らなくなります。(支払督促申立を受理されればの話ですが・・・)
(2)競合する債権者がいる場合。
要するに法的に「取り合い」になったとき、仮執行の手続きが踏んであるとその後がやりやすくなります。
1.債務者との間で債務の存在や金額に争いはない(ある場合は、通常訴訟か、
少額訴訟)が、なかなか支払ってくれない場合
2.債務者が裁判までする覚悟はなさそうな場合
3.申立人に明確な証拠があるなど、勝算がある場合
活用例としましては、敷金返還請求、離婚の慰謝料請求、養育費請求など
.
ただし、どんな場合でも通常の訴訟になる可能性はありますので、それを了承の上で行う必要があります。
支払督促に向かないケース
債務者(相手方)がお金を借りた覚えはないとか、金額が違うとか言っているような場合は、債務者が異議申立を行う可能性が高いため、支払督促手続よりも直接訴訟をした方がよい場合もあります。
また、60万円以下の金銭の支払を求める場合は、1回の期日で審理を終え判決が言い渡される少額訴訟という手続を検討する価値があります。
支払督促手続の流れ
1.支払督促の申立・・・相手住所地の簡易裁判所書記官に申立
2.裁判所から債務者へ支払督促の送達
・・・2週間以内に異議申立があれば訴訟へ移行
3.仮執行宣言申立書の提出・・・30日以内
4.仮執行宣言付支払督促の送達
・・・2週間以内に異議申立があれば訴訟へ移行
5.強制執行手続(差押え等)
支払督促を申立てて2週間以内に債務者からの支払いも異議もなければ、30日以内に仮執行宣言の申立てをすることができます。
これに対しても2週間以内に異議申立てがなければ、仮執行宣言が付与され、支払督促は裁判の判決と同様の効力を持ちます。
つまり、申立人は強制執行(差押え等)の手続に入ることができるのです。
債務者が強制執行を止めさせるためには、裁判所に執行停止の申立てをして、保証金を供託した上で、執行停止の決定を得る必要があります。
なお、期日内に債務者からの異議申立てがあった場合には、支払督促事件は通常訴訟に移行します。
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