「資料を送ります。」といって、職場に電話がかかってきて、その後、「資料を見ていただけましたか?」等と、しつこく何回も電話があり、是非会って詳しい話をしたいと、遠方なのにやってきて、営業マンが地価の動きから、節税効果、年金効果など、さも研究者のように延々と長時間に渡って説明し、「いりません」と言っても、「何が問題なのか?」「ここまで時間と経費を使って来ているのに・・」などとおどし、「女房に相談してから決めたい。」と言っても、「反対されるに決まっていますから、収入が出たときに話せばいいですよ。」などと、考える時間も与えてくれず、ついに長時間に渡る勧誘で判断能力が低下し、その場から開放されたいという気持ちで、契約書にサインしてしまった・・・・・。
典型的な投資マンションの購入パターンかも知れません。
メリットとデメリットを良く理解して買っていただく良心的な業者も多いのですが、いまだに強引な営業マンが多いのも事実です。
実際に自分で研究されて、自ら積極的に投資マンションを購入された方ではなくて、購入したことを後悔している場合、解約したい気持ちはわかります。
解約のためには、そのポイントと方法がありますので、以下を参考にして下さい。
クーリングオフ
不動産取引のクーリングオフは、クーリングオフ告知の日から8日間です。
但し、クーリングオフできるケースは限られています。
また、クーリングオフは書面で通知する事が必要です。
内容証明郵便を販売業者の代表者あてに送ります。
クーリングオフの対象外
(1)不動産業者の事務所でした契約
(2)条件を満たす「案内所」でした契約
・(条件1)土地に定着した建物
・・・テント貼りの案内所で契約なら、クーリングオフ可能です。
・(条件2)専任の取引主任者の設置義務のある案内所
・・・実際に取引主任者がいなくてもクーリングオフは出来ません。
ちなみに、取引主任者不在で契約書を交わしても、契約そ
のものは有効です。
その場合、宅地建物取引業法第35条違反で、管轄の監
督庁に申し入れ、指導等をしてもらい圧力をかけます。
(3)買主が申し出た場合の自宅、勤務先での契約
・・・売主が申し出た場合は、対象です。
一般的には、売買契約書に「買主の申し出により・・・」と記
載されているのがほとんどですから、勇気を出して、削除を申
し出て下さい。
消費者契約法による解約
急増する消費者契約トラブルに対して消費者(投資マンション購入者)が事業者(分譲業者など)と契約を締結する際に、事実と異なることを説明された場合や、「誤認」を与えるような説明を受けた場合など、契約後に意思表示を取り消すことができると定めた法律で、平成13年4月に消費者の利益の擁護を図る目的で施行されました。
具体的に取り消しが可能となるのは以下の5項目となります。
(1)不実の告知(消費者契約法第4条1項1号)
(2)断定的判断(同第4条1項2号)
(3)不利益事実の不告知(同第4条2項)
(4)不退去(同第4条3項1号)
(5)監禁(同第4条3項2号)
(1)「不実の告知」は、
「重要事項」について事実と異なることを告げること、あるいは告げられた内容が事実であると誤認させる内容であることを指します。重要事項とは契約を締結するかどうかの判断材料であり、家賃保証をしていないにもかかわらず「入居者がいなくなっても心配ありません」といった表現が当てはまります。
ここでいう「告げる」とは、口頭で述べるだけではなく、それとなく「ほのめかす」場合も含まれ、また消費者が「告げられた内容が事実であると誤認」した際に、消費者には過失はなかったかどうか、つまり「過失の有無」は問わないこととなっています。
(2)「断定的判断」は、
将来におけるその価値、または将来において消費者が受け取るべき金額その他の将来における変動が不確実な事項について、断定的判断を提供すること、あるいは提供された断定的判断の内容が確実であると誤認させることです。
「家賃が下がることはあり得ません」「将来は必ず売却益が出ます」といった表現がそれに該当します。
「断定的」と解釈できる判断基準は難しい面がありますが、過去の数値データを提示しながら「過去は・・・でしたから、10年後には、・・・程度値上がりすると思いますよ」といった場合は、断定判断の提供にはならないと解釈されており、「客観性」が伴うか否かがポイントとなります。
(3)「不利益事実の不告知」は、
「重要事項」説明において、消費者の利益となる旨を告げ、かつ、不利益となる事実を故意に告げなかったことにより、不利益になる事実が存在しないと誤認をし、契約を締結した場合です。
販売する投資マンションの南側に新たなマンション建設が予定されており、かつ事業者はその事実を知っているにもかかわらず一切説明しない。
中古物件で、管理費の滞納があるのに説明がない。などがあてはまります。
(4)「不退去」は、
事業者に対し購入者が、その住居又はその営業を行っている場所から退去してほしいという意思を示したにもかかわらず、その場所から退去しないことで、「契約するまで帰りません」と居座る場合です。
(5)監禁は、
事業者が契約の締結について勧誘している場所から購入者が退去する旨の意思を示したにもかかわらず、その場所から購入者を帰さないことです。
「契約するまで帰しません」といった場合です。
なお、注意点としましては、
(1)取消権は追認することができる時から6ケ月以内にしないと時効により消
滅してしまう。
(2)契約の締結から5年を経過したときも同様(同第7条1項)に時効になる。
さらに、売主(事業者)と買主(消費者)との直接取引に限定されず、両者の間に媒介または代理として介入した業者にも準用されることとなっています。
手付放棄
売買契約締結時の手付金は、解約手付といい、あらかじめ解約する場合の違約金の金額をきめるものです。
一般の住まいとしてのマンション等の契約は、売主が一般の方で、仲介の契約がほとんどですから、手付金が少ないと売主が不信感を持ちますので、100万円位は必要でしょうが、投資マンションは、意外に少額で契約することが多いようです。
手付金10万円、というのもありえますし、極端な話1万円もありえます。
但し、その場合、中間金を「早めに・・・万円振り込んで下さい」となるはずです。
そこで、ちょっと待って下さい。中間金を払うというのは「履行の着手」になる可能性があり、解約する場合は、手付金の放棄だけで済まなくなります。つまり、売買代金総額の2割金・・・通常2割条項といいます・・・が必要になってしまう恐れがあるのです。
恐れがありますと言いますのは、何も知らないと、業者に脅されて売買契約書に書いてありますから「2割金を払うか、買うしかありませんよ」と言われて従ってしまうことになりますよ、ということです。
しかし、宅建業者が関与する不動産売買契約において、債務不履行による違約金の額が売買代金総額の2割金と約定されている事例が多いのですが、これは、宅地建物取引業法により違約金などは最高で代金の2割金を超えてはならないとされているために、契約書類を作成する宅建業者が、その上限額を重要事項説明書や契約書に一方的に記載しているのが現状であるだけです。
取引の事例においても契約当事者間で違約金について明確な協議や合意をすることはほとんどありません。・・・当然の如く重要事項説明書や売買契約書の説明に際して、一方的に違約金は2割金相当額である旨を告知しているだけです・・・このことから、宅建業者が重要事項説明などにおいて説明したとしても、真に契約の当事者間で合意したと考えることはできませんので、契約書の条項は最高額が2割金相当額である旨の例文規定に過ぎないと考えられるのです。
実務においても代金額の2割金相当額の違約金を支払われる事例はほとんどなく、手付金相当の額(売買代金の5%から10%)で処理されているのが現状です。まして、知っている、知らないという関係では、強者になる業者と弱者である一般購入者とでは、弱者保護の精神から戦う価値はあるかと思いますが・・・。
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